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曹洞宗のおまいり

葬儀(枕経・通夜)
そうぎ(まくらぎょう・つや)

葬儀とは、仏の弟子になること

日本の仏教には、いろいろな宗派がありますが、その中で曹洞宗に特徴的なのが、お釈迦さまより相続されてきた正伝(しょうでん)の仏法を守っているということです。

お釈迦さま(空想上の人物ではありません。本当にいらっしゃいました)には弟子がいて、その弟子にはまた弟子がいて、そしてその弟子にはまたその弟子が...というように、今日までずっと続き、私たちまで繋がっています。
これが正伝の仏法で、観念的な事ではなく、弟子→弟子→弟子の関係が、血脈(けちみゃく)という紙にきちんと書かれています。

その途中には、「ダルマさん」愛称で有名な菩提達磨大和尚や、日本の曹洞宗を開いた道元禅師の名前もあります。

血脈。中にお釈迦様から亡くなった方に至るまでの系譜が記されています。

さて、仏法を授かると普段の名前とは別に、仏の弟子としての名前を師匠に付けてもらいます。これが「戒名(かいみょう)」です。

本来戒名は、生前の「仏教徒になろう」と思ったときに付けてもらい、血脈もそのときにもらうべきものですが、現在ではそのような機会を持てる人は少なく、亡くなってから葬儀式でもらう場合がほとんどです。

ちなみに円道寺現住職の場合、お釈迦さまから数えて83代目の弟子ですので、私が葬儀をあげる故人は84代目の弟子ということになります。

亡くなってから、枕経、通夜、葬儀式と、何度もお経をお唱えしますが、これらはみな、故人が立派な仏の弟子となり浄土(天国)へと登っていけるようにするための手助けです。

手助けするのは、お坊さんの力だけでは足りません。

遺族、友人の心の中には生前故人からいただいた恩や愛情があり続け、それを糧としてみな生きているのです。
身近な人が亡くなった悲しみの中で落ち着いた気持ちになるのは難しいかと思いますが、お坊さんと手を合わせ、無事浄土(天国)へ行けるよう力を貸してあげて下さい。

枕経

臨終の後に、最初にお唱えするお経が枕経です。

本来は、まもなく亡くなるというときにお唱えするものだったそうですが(昔は自宅で家族に見守られて亡くなるのが一般的だったため)、現在は自宅で亡くなった後、または病院からご遺体が戻った時点で、僧侶がお伺いしてお唱えします。

枕経に参列するのは、故人の近親者や特に親しかった方だけです。

この後の法要にはたくさんの方が来られますので、枕経では故人と共に過ごした時間を思い出し、心静かにお経をお勤めします。

円道寺では枕経に「遺教」というお経を読みます。
このお経はお釈迦さまが亡くなる直前に、弟子達に説いた最後の説法で、「お釈迦さまの遺言」です。
遺教は、仏教徒としての心得が説かれており、故人がこれから血脈と戒名をいただいて浄土(天国)に行くために最初に聞いていただくのにふさわしいお経です。

通夜

葬儀の前日の晩に行います。

本来は、その名前の通り、夜を通してお経を読み、亡くなった人の成仏を祈り、また個人を偲んで語り合うものでした。
現在では、開始時間を事前に決め、会葬者はそれに合わせて参列し焼香するというのが一般的な形です。
ただし、お経が終わった後も、近親者は故人の遺体に付き添い夜を明かします。

喪主が1人徹夜で付き添うのでは翌日の葬儀が大変ですの、複数または交代で付き添うとよいでしょう。

円道寺ではお通夜では「修証義(しゅしょうぎ)」と「舎利礼文(しゃりらいもん)」というお経を読みます。

修証義は、曹洞宗のお経で、道元禅師の著書「正法眼蔵」を明治時代に一般の人にもわかりやすくまとめたものです。

舍利礼文は、「私の願いと仏の力によって、人々が幸せになり、悟りを得ることができますように」という意味が込められた短いお経です。

葬儀

葬儀式のうち、前半2/3は最初に述べた血脈と戒名をを故人に授けるお勤めで、後半が故人を浄土(天国)へ送り出すお勤めになります。
本来後半部分を告別式といいますので、葬儀=告別式と考えるのは正しくありません。

式の流れに沿ってもう少し詳しくに内容をご紹介します。

剃髪

仏の弟子になるために、故人の髪を剃る所作をします(実際には剃りません)。

授戒

血脈と戒名を授けることを「授戒(じゅかい)」といい、これを受けることを「受戒(じゅかい)」といいます。故人が受戒するわけです。

受戒するには、まず懺悔が必要です。
生きているうちには様々な過ちを犯します。
知らずにアリを踏んでいたりとか、自分も気づかないところでしてしまった罪もあります。

導師(葬儀を行うお坊さんのこと)は、「今までに犯してしまったたくさんの過ちに気づき、一切を悔い改めなさい」と故人に説きます。
そして、洒水といって、お棺に清らかな水をかけ煩悩を洗い流す所作をします。

戒法

懺悔と洒水で清らかになったところで、導師は「戒法」という仏の弟子としての守らなければならない事柄を授けます。

『戒法』

三聚浄戒(さんじゅじょうかい)
悪いことをせず、良きこと・人のためになることを行う。


十重禁戒(じゅうじゅうきんかい)
1.生命あるものをむやみに殺さない。2.盗まない。他人のものを欲しがらない。3.道を外れた恋愛をしない。4.嘘をつかない。だまさない。5.酒を飲み過ぎない。6.とやかく言うより、自分が模範になる。7.自慢しない。悪口は言わない。8.物も心も施すことを忘れない。9.怒らない。うらまない。ねたまない。10.仏教と仏教を信じる人たちを大切にする。

受戒するには、これらの「戒法」を守ることを誓わなければなりけません。
戒法の内容を見ると、亡くなってから誓うものというよりは、生きているときから誓い、守るべき事だといえます。
それはもともと、受戒は生きているうちに行うことだったためです。

今を生きる私たちも、日頃から心がけたい戒めです。

血脈授与

懺悔・洒水・戒法の3つが無事終わったところで、血脈が導師から渡されます。
円道寺では出棺の際に故人の胸の上に血脈を置いてもらい、荼毘に伏します。
血脈は浄土(天国)まで持って行くのです。

以上で前半部分が終わり、告別式へと続きます。

法炬(松明・たいまつ)の儀

まず導師は法炬を回して、お棺に火を放つ所作をします。
ただ、火の付いた法炬を振り回すわけにはいきませんから、法炬を模した棒を使います。
本来は、導師が火葬場で荼毘に伏すべきだとされていたので、その名残として行います。

引導法語

「引導を渡す」とは、はっきりと告げ、未練無くやめさせることです。
故人の霊は「自分は亡くなったけれども、この世にも未練がある、浄土(天国)には行きたくない」と思っているかもしれない。
それに対して導師は、「法語」といって、亡くなった方の立派だった人生を讃えた漢文の言葉を捧げながら「あなたはもう亡くなったのだ。だから迷うことなく浄土(天国)への道を登って行かなくてはいけない」と故人に告げます。これが引導法語です。

焼香

ここまでの式で、迷い無く浄土(天国)へ向かうことになった故人に対して、最後に参列した皆さんが順に焼香します。

焼香には、自分の身体を清め、清らかな心でお参りするという意味や、お香の良いかおりを捧げるという意味があります。

故人より生前に受けた感謝と共に、無事浄土(天国)に着けるようにとの願いを込めて焼香してください。